
現場は昭島市。89年式マセラティと聞いてもブランクが想像つきません。お客さんがコーンズから仕入れたブランクを持っていました。ローバー車で何度か見かけたことのあるブランクキーです。カリフは公道を走ることはなく、たまにレースに行く際に積載車に積んでいくそうです。イタ車らしいイエローカラーです。

お客さんが言うには、カリフは全世界で200台くらいしか生産されなかった希少車らしいです。2800ccツインターボで250ps。マセラティのイメージ通り、羊の皮を被った狼ですね。ドアの鍵は持っているけど、イグニションの鍵をなくしたそうです。コーンズカンパニーに問い合わせたが、データの照会も納期の割り出しも困難で、鍵屋さんに作ってもらった方が安くなるよと言われたようです。

レカロのバケットシートに座って、鍵作体勢に入ります。作業をやる上では、バケットシートはやりずらい。そして暑い。バスタオルを頭に被ったまま作業を行います。

イグニションの鍵穴はステアリングの根元にある。覗くことはほぼ無理か。タンブラーのパチパチ音を聞きながら、枚数を確認します。資料には9枚とあるけど、8枚じゃないかな。ピッチを取って、タンブラー位置を見ます。

シートカバーを全部脱がせてくれました。クーペスタイルなんですね。

インプレッション作業で、ブランクを削っていきます。ニュートラル位置の遊びが大きく、意外と傷が分かりやすい。こういう作業はたいてい時間が読めないと伝えるのですが、30分で、ほぼ完了です。あまり精度の高くないシリンダーだという印象です。カットの浅い配列だったことも一因です。

出来上がったキーを純正ブランクにコピーします。ところがカットした純正キーが廻らない。山の高さを計測したら、0.1mmほど高い。ブランクの精度なのか。カットが浅い分には修正が効くので、再度インプレッションしながら手彫り修正します。純正ブランクの材質は、鉄?なんでしょうか、ヤスリで削ると固い素材だと分かります。

約半年放置していたので、ブースターケーブルをしばらく接続して充電します。でもエンジン始動には至らず、エンジン音を聞けないまま、現場を去ることになりました。
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